真空機器の応用例

真空乾燥器・真空乾燥装置


1.はじめに

 工業的に利用される洗浄後の乾燥は温風乾燥がほとんどであるが、タップ孔や狭い隙間があるなど複雑な形状の部品、あるいは焼結部品のようにポーラスな形状の場合は、表面は乾燥しても隙間やポーラスな内部 は乾燥していない事が多い。これらの問題は真空乾燥によってほとんど解決される。ただし、熱伝導率の低い材質で粒状の乾燥では必ずしもあてはまらない。 小径の発泡スチロール粒などでは温風乾燥と真空乾燥での乾燥時間に大きな差は見られないケースがある。真空乾燥器は、温風乾燥器に比べ、コスト高になるので一般的には精密機械部品の乾燥に利用されるが、 部品の耐熱温度以下で電子機器部品、あるいは、 半導体、LCD製造装置部品の乾燥にも利用される。ここでは、当社が今まで、納入実績のある種々の真空乾燥器について紹介する。

2.機種と装置の構成

    当社では 表-1に示すように研究室規模での実験用に 適した低コストの小型タイプ(DN,DQ型)から生産設備用の 大型タイプ(DQ,DY)までラインナップしています。 

1)水系乾燥器
    水洗浄後の乾燥では水の蒸発潜熱が大きいため蒸発に伴う温度低下が大きく、真空乾燥工程に入る前に大気圧状態で部品温度を上げておくと乾燥時間を 短縮できる。さらに昇温を早くしてタクトタイムを短くするには 槽内エア(N2)をファンで強制循環する方法があり、高速真空乾燥器がこれに対応します。
    水系乾燥器の加熱温度は60~90℃程度に設定するのが一般的であるが良質な乾燥状態を得るために150℃位まで昇温するケースもある。コスト的には200℃以下の設定温度であれば槽内寸法がパラメータになる。槽内圧力が約700Pa(5Torr)まで低下すれば表面に付着した水膜、水滴はほとんど蒸発し、乾燥時間は真空乾燥を スタートする温度と、水分量によって左右される。又、部品 温度が40℃以下になると水分蒸発が低下するのでこの温度以下では乾燥時間が長くなる。
    高速真空乾燥器では部品温度が低下した場合に大気圧まで復圧し、循環ファン起動によって部品の再加熱を行い再度真空乾燥工程を行うシーケンスが組めるようになっている。この運転法により乾燥時間を短縮 する事が可能である。乾燥時間の短縮には部品温度を上げる事も大事だが部品を乾燥器に入れる前に 液切りの前処理を行い、付着水分量を減らす事も大きなファクターとなる。 

2)有機溶剤系乾燥器
    フロン廃止後、洗浄に使用される溶剤は引火性のものが 多く装置構造は防爆型となる。洗浄液として第二、第三 石油類、アルコール系等を使用する場合、加熱温度は溶剤 の引火点を考慮した上で決められる。真空乾燥器では 乾燥対象の部品が密閉された槽内で減圧処理される が溶剤ヒータ、電磁弁、電気系ケーブルの接続部、モータは 防爆構造としています。加熱は槽外壁、槽内棚板を 温水又は熱媒油を循環して行い、加熱系は温水タンク 又は熱媒油タンク、循環ポンプ、加熱ヒータ、ヒータ制御部で構成される。有機溶剤系の蒸発潜熱は水の15%程度 なので蒸発に伴う部品の温度降下は少なく、乾燥処理前に引火点よりも多少低い温度に昇温してあれば十分で ある。タクトタイム内に所定の乾燥状態が得られるかどうかは サンプルテストを行い確認する事を推奨します。 

3)真空排気系
    真空ポンプの構成は、表-2のように水系あるいは 溶剤系で、又水系の場合は乾燥負荷(水分量)によって 異なる。水系乾燥器の場合、蒸発した水分が真空ポンプ オイルに混入すると到達圧力が規定性能より悪くなる。 当社のオイル循環型油水分離装置で浄化すれば影響は 少ないが処理量は300~350cc/hrであるから、乾燥器の水分負荷が多い場合は水冷トラップを併用する事になる。 蒸発水分量の60~70%を水冷トラップで回収し、30~40% を油水分離装置で浄化すれば真空ポンプのオイル交換等メンテサイクルを長くする事ができる。乾燥による水分蒸発 量がさらに大きい場合(0.8~1.0L/hr以上)は(水封 ポンプ)+(メカニカルブースタ)による排気となる。これは主と して大型乾燥器などの場合である。 有機溶剤系の 排気ポンプは油回転ポンプがほとんどであるが、槽内で 蒸発した溶剤ガスが真空ポンプオイルに混入すると水系と 同様に到達圧力が規定性能より悪くなる(200~500Pa)。 溶剤蒸気の真空ポンプ混入を防ぐには 排気ラインに冷凍 機で-20℃に冷却したコールドトラップを設ける。コールドトラップ の大きさは溶剤蒸気量により決める事になるが100%回収するのは不可能であり、ポンプオイルの交換等定期的な メンテナンスが必要である。

4)冷却
    通常の真空乾燥では表面の液層が蒸発してしまうと 処理品温度は40~50℃程度の状態なので冷却工程を 考えなくても槽内からの取出しは可能である。 但し、処 理温度が高く乾燥完了時に50℃以上で取出しに安全上 問題がある場合は冷却工程として大気復圧後にエアフロー もしくはN2フローの機能を設ける事は可能である。

3.まとめ

   真空乾燥器は温風乾燥器と比べて利点はあるものの構造 上コスト高になるのは避けられない。目的に合った乾燥品質 が得られるかどうかはサンプルテストを行い確認する事をおすすめします。尚、真空乾燥について理解を深めるために 資料 1)を参照していただければ幸いです。 

資料:1) 科学機器 1999,8月 No614 P28‘真空乾燥装置‘

表-1 型式と主仕様

型式 用途 温度[℃] 圧力[Pa] 槽内寸法(mm) ヒータ 真空排気系 制御系
DN 実験室用
(卓上型
40~200℃ ×10Paオーダ
W300×H300
×D300
槽外壁加熱
:温調器、PID制御
別途 手動運転
DQ 実験室
開発テスト用
40~200℃ ×10Paオーダ
W300×H300
×D300
W1000×H1000
×D1000
槽外壁加熱
:温調器、PID制御
別途 手動運転
生産設備用 100~200℃
(600℃まで可)
W300×H300
×D300~
W1000×H1000
×D1000
槽外壁加熱
(*200℃~600℃:
槽内ヒータパネル一
棚板加熱も可)
油回転ポンプ
自動運転
異常検出
インターロック
DY 生産設備用 40~200℃ 200Pa
W400×H400
×D600

W1500×H1500
×D1750
槽外壁加熱
(棚板加熱も可)
水封ポンプ
+メカニカルブースタ
自動運転
異常検出
インターロック
操作パネル
:グラフィックパネル
×10Paオーダ 油回転ポンプ
3Pa
油回転ポンプ
+メカニカルブースタ
HSD 生産設備用 40~200℃ ×10Paオーダ
(=200Pa)
W500×H500
×D650

W900×H900
×D1100
槽内ヒータパネル
:4面
(循環ファンでの加熱)
油回転ポンプ
(水封ポンプ
+メカニカルブースタ)
自動運転
異常検出
インターロック

表-1 型式と主仕様

乾燥負荷 真空排気系 付属設備
水系 800cc/hr以上 ・水封ポンプ+ メカニカルブースタ クーリングタワー
300~800cc/hr ・水封ポンプ+メカニカルブースタ クーリングタワー
・油回転ポンプ ・水冷トラップ+冷水チラー
・油水分離装置(真空ポンプオイル循環)
300cc/hr以下 ・油回転ポンプ ・油水分離装置 (真空ポンプオイル循環)
有機溶剤系 ・油回転ポンプ(安増モータ付) ・コールドトラップ(冷凍機付:防爆構造)